


※弁護士事務所に勤務して間もない新人職員(少しの知識と経験あり)からの質問に答えるという形で説明しています。
新人職員
家族が突然,逮捕されてしまった場合,どうしたらいいでしょうか?残された家族としては,詳しい事情がわかりません。今後どうなるのか,とても心配です。
弁護士
高橋裕
とにかく,弁護士に警察署まで面会(接見)に行ってもらうの一番です。逮捕直後は,ほとんどの場合,家族面会ができません。どうしよう,どうしようと迷っていても,何も進展しません。
新人職員
どの弁護士にお願いすれば,いいのでしょうか?
弁護士
高橋裕
知り合いの弁護士がいれば,先ず,その弁護士に連絡しましょう。知り合いの弁護士に連絡が取れない場合(知り合いの弁護士がいない場合)は,弁護士会に当番弁護士を依頼するか,自分でインターネットなどで探すことになります。
新人職員
国選弁護人にお願いするのはどうですか?
弁護士
高橋裕
国選弁護人が面会(接見)に行くのは,名古屋の場合ですと,逮捕された日の2~3日後です。
新人職員
国選弁護人は直ぐに面会(接見)に行ってくれないのですか?
弁護士
高橋裕
現在の法律では国選弁護人は逮捕直後には付きません。名古屋の場合,通例,逮捕の翌日あるいは翌々日の午後に裁判所で勾留質問という手続があります。そのときに本人が「国選弁護人をお願いします」と言うと,その日か次の日に裁判官が国選弁護人を選任します。結局,国選弁護人として選任された弁護士が面会(接見)に行く日は,逮捕日から2~3日後になります。
新人職員
国選弁護人は,逮捕後,直ぐには,面会(接見)に行ってくれないのですね。
弁護士
高橋裕
残念ながら,現在の法律ではそのとおりです。そのため,弁護士会として,当番弁護士という制度を設けています。
新人職員
当番弁護士は,いつ面会(接見)に行ってくれるのですか?
弁護士
高橋裕
当番弁護士の面会(接見)は,依頼があってから原則24時間以内,遅くとも48時間以内という決まりがあります。したがって,逮捕日にすぐ依頼したとしても,当番弁護士の面会(接見)は翌日以降になることもあります。
新人職員
当番弁護士は,弁護士を選ぶことはできるのですか?
弁護士
高橋裕
できません。自分で信頼できる(信頼できそう)と思う弁護士に依頼したい場合は,知り合いの弁護士に頼むか,インターネットなどで探すことになります。
新人職員
弁護士選びのコツは,何かありますか?
弁護士
高橋裕
逮捕された警察署の近隣地域の弁護士の中から選ぶことをお勧めします。
新人職員
なぜですか?
弁護士
高橋裕
直ぐに面会(接見)に行ってもらうためです。また,引き続き,弁護活動を依頼するのであれば,何度も面会(接見)に行ってもらうことになります。例えば,名古屋市内の法律事務所で仕事をしている弁護士高橋が,東京都内の警察署まで,直ぐに面会(接見)に行ったり,その後,短期間に何度も面会(接見)に行くのは,とても難しいです。
新人職員
弁護士選びのコツは,他にありますか?
弁護士
高橋裕
当然のことですが,刑事事件に詳しい弁護士を選ぶことが大事です。
新人職員
弁護士であれば,皆,刑事事件に詳しいのではないですか?
弁護士
高橋裕
そのように思われている方も多いようですが,実情は違います。
医師(お医者さん)のことを考えてください。内科,外科,皮膚科,耳鼻科,眼科,小児科,産婦人科,精神科,心療内科,脳神経外科など,多くの診療科目があります。どんな分野でも詳しいという医師は普通はいませんよね。
新人職員
まぁ,そうですね。
弁護士
高橋裕
弁護士も同じです。弁護士の活動範囲はとても広いので,弁護士によって詳しい分野が異なります。
新人職員
なるほど。
弁護士
高橋裕
現在,弁護士は,日本全国に約4万人,愛知県内に約2,000人いますが,多くの弁護士は民事事件に詳しく,民事事件を多く担当しています。刑事事件に詳しく,刑事事件を多く担当している弁護士は,少数派です
新人職員
なぜですか?
弁護士
高橋裕
一つには,民事事件の方が,刑事事件に比べて,事件数が多いからです。裁判所でも,民事事件担当裁判官の数は,刑事事件担当裁判官の数の1.5倍~2倍近くです。
新人職員
なるほど。
弁護士
高橋裕
その他に,弁護士の仕事に対する趣向や,事業者としての経営の問題もあります。
新人職員
それは,どういうことですか?
弁護士
高橋裕
具体例に話すと長くなって今日のテーマと離れてしまうので,別の機会にお話したいと思います。
新人職員
わかりました。それでは,刑事事件に詳しい弁護士を選ぶときの,ポイントを教えてください。
弁護士
高橋裕
このポイントで決まり!,というものはありません。刑事事件の取り扱い件数は一つの目安にはなります。
新人職員
そう言えば,何百件~何千件などという取り扱い実績をうたっている事務所もありますね。
弁護士
高橋裕
そうですね。取り扱い件数をみるときは,弁護士一人当たりの件数なのか,事務所全体での件数なのか,区別して見ることが大切です。
新人職員
どう言うことですか?
弁護士
高橋裕
例えば,所属弁護士20名の事務所全体で取り扱い件数600件と言った場合,計算上,弁護士一人平均では30件になります。
新人職員
そうなりますね。
弁護士
高橋裕
さらに,平均30件ですので,取り扱い件数が30件より多い弁護士もいれば,それよりも少ない弁護士もいます。
新人職員
そうですね。
弁護士
高橋裕
そのうち,取り扱い件数の多い弁護士が担当弁護士になるか,少ない弁護士が担当弁護士になるか。その決め方も,依頼者と相談して決めるか,事務所の方で決めるか,いろいろな場合があるでしょう。
新人職員
ちなみに,高橋弁護士の刑事事件取り扱い件数はどのくらいですか?
弁護士
高橋裕
裁判官から弁護士になってからの約4年間ですが、前半の2年は年平均で20~30件,後半の2年は年平均で30~40件です。
やはり,弁護士を続けていると毎年徐々に増えて来ます。昨年は国選と私選を併せて50件近くありました。
弁護士になってからの件数を合計すると100件は超えています。
新人職員
昨年は,ほぼ毎週,新しい刑事事件を担当する感じですか?
失礼な質問とは思いますが,そんなに担当して,充実した弁護活動ができるものでしょうか?
弁護士
高橋裕
私の場合,民事事件の依頼をほとんど受けず(現在の民事担当件数2件),仕事時間のほとんどを刑事事件に当てています。
国選事件でも,多くの場合,標準とされる回数以上の面会(接見)をしており,被疑者から「私選の先生よりも頻繁に来てくれるのでありがたい。」と言われたこともあります。
新人職員
これまた,失礼な質問ですが,刑事弁護の成果は十分に出ているのでしょうか?
弁護士
高橋裕
示談成立,不起訴,保釈,執行猶予,少年院送致回避など,一定の成果も挙げています。
名古屋地裁の出納課に保釈金を連日納めに行くこともあります。
新人職員
具体例な話はありますか?
弁護士
高橋裕
同時に起訴された共犯者多数の事件で,私の担当した被告人が一番早く保釈されたという事件もあります。
新人職員
わかりました。失礼な質問をして申し訳ありませんでした。
弁護士
高橋裕
いえいえ。大事な質問です。少しも失礼ではありません。
新人職員
ありがとうございます。
ところで,依頼する弁護士を決めて,初回接見に行ってもらった後は,どうなるのですか?
弁護士
高橋裕
初回接見の後は,「弁護依頼から初回接見まで」,「初回接見後の弁護活動(示談)」,「初回接見後の弁護活動(否認事件その1,その2)」,「初回接見後の弁護活動(検察官への申し入れ)」などをご覧ください。
新人職員
わかりました。今日は,「家族が突然,逮捕されました」についてお話をいただきました。ありがとうございました。