

※弁護士事務所に勤務して間もない新人職員(少しの知識と経験あり)からの質問に答えるという形で説明しています。
新人職員
相談者の中に「今日、家族が警察に逮捕されました。そのことを会社に秘密にしたい。」という希望を言われる方が多いですね。
弁護士
高橋裕
そうですね、もっともな希望ですね。会社をクビになる可能性が高くなりますから・・・。
新人職員
どうしたらいいですか?
弁護士
高橋裕
このような場合は、特に急ぎますから、直ぐに弁護士に弁護活動を依頼することをお勧めします。
新人職員
普通ですと、先ずは法律相談を実施して、その後、弁護活動を依頼するかどうか考える、というパターンですね。
弁護士
高橋裕
そうですね。普通ですと、事務所で相談室を1時間押さえてじっくりと話を聴いてから、となります。
新人職員
そのパターンではダメなんですか?
弁護士
高橋裕
ダメとは言いませんが、「逮捕されたことを会社に秘密にしたい。」というご希望を叶えることが難しくなって来ます。
新人職員
会社にバレ易くなる、ということですか?
弁護士
高橋裕
そのとおりです。逮捕後すぐに弁護活動を開始して勾留されずに釈放されれば、基本的に逮捕日を含めて2~3日の欠勤で済みます(名古屋での運用の場合)。この日数が、逮捕されたことを会社に秘密できるぎりぎりのラインです。
新人職員
勾留されると、更に10日ですね。
弁護士
高橋裕
そうです。欠勤が2~3日を超えて本人と電話連絡もできない場合、会社としては、「どうしたんだろう?」と思い始め、家族に尋ねても明確な回答がないと、「もしかして?」と考え、「何かして捕まったのではないか?」、と疑うようになります。
新人職員
家族から、「体調不良でしばらく休ませてください。」と会社に電話するという方法はどうですか?
弁護士
高橋裕
そのような電話をされる家族が多いです。2~3日以内ですと、病状等を詳しく聞かれずに、「お大事にしてください。」と言われ、体調を気遣われて済む可能性が高いです。
新人職員
まぁ、2~3日以内なら、そうでしょうね。
弁護士
高橋裕
ところが、2~3日を超えると、会社から家族の元に電話が掛かって来て、「病状はいかかですか?、長引くようでしたら、会社の者が代表でお見舞いに伺います。病院はどちらですか?」と尋ねられます。
新人職員
まさか、警察に捕まっているとは言えないですね。
弁護士
高橋裕
そのとおりです。しかし、家族から言わなくても、明確な説明ができないと、会社としては、「もしかして、何かして捕まったのではないか?」という疑いの目を向けて来ます。最終的に警察に捕まったことが、会社に隠しきれなくなる可能性が高くなります。
新人職員
そうすると、会社に秘密にしたい、という希望が叶えられなくなってしまいますね。
弁護士
高橋裕
そうなります。だからこそ、会社に秘密にしたい、という場合は、一日でも早く、一刻でも早く、弁護士に弁護活動を依頼することをお勧めしています。
新人職員
弁護士に直ぐに弁護活動を依頼することを勧める理由はわかりました。弁護士に直ぐに弁護活動を依頼すれば会社に秘密にできる、ということですね。
弁護士
高橋裕
申し訳ありませんが、必ず、そのような良い結果が出るというお約束まではできません。
新人職員
えっ、どういうことですか?
弁護士
高橋裕
これまで何度もご説明しているとおり、事件の内容等によるからです。
新人職員
これまでの説明ですと、悪質とまではいえない事案で、逮捕された人に前科等がなく、確実な身柄引受人が居る、被害者との示談ができた、などの事情が必要ということですね。
弁護士
高橋裕
そのとおりです。
新人職員
弁護士が付いていなくても、勾留されずに2~3日で釈放されることはないのですか?
弁護士
高橋裕
稀な事例ですが、そのようなこともあります。検察官あるいは裁判官が釈放の判断をすることがあります。弁護士高橋も、裁判官時代に、弁護人は付いていない事案で、検察官から勾留請求された事件について、勾留請求を却下して釈放の判断をしたことが何度かあります。
新人職員
じゃあ、高い弁護士費用を支払って弁護活動を依頼しなくてもよいのでは? 弁護士事務所の職員である私がこんなことを言うのはおかしいかも知れませんが・・・。
弁護士
高橋裕
弁護活動なしで2~3日以内に釈放される事例もあることはありますが、稀です。また、示談交渉や身柄引受人の確保(身柄引受書の提出)という活動は、弁護士なしでは難しいでしょうね。
新人職員
それはそうですね。
弁護士
高橋裕
更に、裁判官が検察官の勾留請求を却下して釈放の判断をしても、検察官が準抗告という不服申立ての手続を行うと、釈放の判断が覆されたり、現実の釈放が翌日になったりすることがあります。
新人職員
逆転は困ります。一日でも早く釈放してもらいたいのに、翌日釈放も困ります。
弁護士
高橋裕
そうですね。会社からの問い合わせも、いつ来るかわかりませんし・・。
新人職員
そう言った困った事態をできる限り避けるためにも、やはり直ぐに弁護士を依頼した方が良いのですね。
弁護士
高橋裕
そのとおりです。
新人職員
弁護士を直ぐに依頼して、会社に秘密にできる事件としては、高橋弁護士の経験上、どのような事件が多いですか?
弁護士
高橋裕
私のこれまでの経験から、いくつかご紹介します。プライバシー保護のため、若干、事案を編集していることをご了承ください。
新人職員
はい。
弁護士
高橋裕
一つ目は、前科のない会社員が忘年会の帰りに、夜間、通行人とトラブルになって暴力を振るったという暴行事件です。
新人職員
逮捕されたのですね。
弁護士
高橋裕
はい。酔っ払って駆けつけた警察官に抵抗したこともあって、逮捕されてしまいました。
新人職員
どうなったのですか?
弁護士
高橋裕
警察から連絡を受けた会社員の奥様から弁護士高橋宛てに、電話で弁護活動の依頼がありました。「会社に秘密にしたい。」とうご希望でしたので、直ぐに受任することにして、警察署の近くで待ち合わせをして正式に受任しました。その足で直ぐに、本人に接見(面会)しました。奥様から弁護活動の依頼を受けた弁護士であることなど、自己紹介をした上、今後の取調べに対するアドバイスをするとともに、何とか勾留されずに釈放されるよう示談交渉などの弁護活動を行うことを説明してきました。
新人職員
弁護人選任届は、その場で書いて貰ったのですか?
弁護士
高橋裕
直ぐに、写しを警察署(捜査主任官宛)に提出して、原本を検送後に検察庁(担当検察官宛)に提出しました。
新人職員
その後、どうなったのですか?
弁護士
高橋裕
経過の詳細は割愛しますが、受任した翌日、勾留請求されることなく釈放されました。その後、示談が成立し、暴行事件は不起訴処分で終わりました。前科が付かない解決です。もちろん、会社には逮捕されたことを知られずに済みました。
新人職員
釈放の段階では、示談はまだ成立していなかったのですか?
弁護士
高橋裕
示談交渉中でした。示談成立には至っていませんでした。
新人職員
示談が成立していなくても、釈放して貰えるのですか?
弁護士
高橋裕
何もしていない場合は困難ですが、弁護活動として示談交渉に着手しており、その経過や見通しなどを担当検察官宛てに報告書を作成して報告しました。このように釈放されるかどうか微妙な場合、担当検察官との信頼関係が大事です。
新人職員
高橋弁護士は、名古屋で刑事弁護活動を数多く担当しているので、信頼を得やすいということですね。
弁護士
高橋裕
そうです。それが、刑事弁護を主な仕事にしている弁護士高橋の強みといえます。
新人職員
他の事例も紹介していただきたいのですが、時間がなくなってきましたね。
弁護士
高橋裕
はい。会社に秘密にして、無事に不起訴処分で終わった事例は、他にもありますので、他の機会に、ご説明させてください。
新人職員
わかりました。今日は、「会社に秘密にしたい」というテーマでお話をしていただきました。ありがとうございました。