執行猶予って,どう言うこと? よく聞くけど… | 元裁判官による刑事弁護、名古屋の弁護士・高橋裕

名古屋の元裁判官による刑事弁護、成田龍一法律事務所 高橋裕弁護士
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執行猶予って,どう言うこと? よく聞くけど…

※弁護士事務所に勤務して間もない新人職員(少しの知識と経験あり)からの質問に答えるという形で説明しています。

新人職員

今日は,「執行猶予ってどう言うこと?よく聞くけど・・・。」というテーマで説明をお願いします。

弁護士
高橋裕

はい。執行猶予という言葉は,どこで聞きますか?

新人職員

よく聞くのは,判決のテレビニュースですね。

弁護士
高橋裕

どのくらい知っていますか?

新人職員

法律的に正確な説明は難しいですが・・・刑事事件の判決は実刑と執行猶予に分かれる。執行猶予の場合,裁判所から出て来てマスコミのテレビカメラに向かって頭を下げている映像が見られるから,刑務所に行かなくても済む。逆に,実刑の場合は,刑務所に入るから,・・・あっ,でも実刑の場合でも,その日のうちに記者会見してる被告人がいますね・・・よく,分かりません。

弁護士
高橋裕

一般的な理解としては,そのような感じだと思います。それでは,順番に説明していきます。

新人職員

はい。お願いします。

弁護士
高橋裕

まず,刑事事件の判決の話であるという点は,正しい理解ですね。民事事件の判決の話ではありません。

新人職員

そこは,大丈夫です。

弁護士
高橋裕

次に,「刑事事件の判決は,実刑と執行猶予に分かれる。」という点は,惜しいですね。刑事事件の「第一審」の判決は,免訴,公訴棄却など特別な場合を除いて,有罪判決と無罪判決です。そして,有罪判決が,実刑と執行猶予に分かれます。

新人職員

何か難しいですね。よく聞く「懲役1年,執行猶予3年」という判決について,説明してください。

弁護士
高橋裕

はい。それは,「被告人を懲役1年に処する。この裁判の確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。」という判決を簡略化した表現です。

新人職員

なるほど。

弁護士
高橋裕

「被告人を懲役1年に処する。」というのは,「被告人を1年間,刑務所に入れて仕事(刑務作業)をさせる。」という意味です。

新人職員

そうすると,実刑ですか?

弁護士
高橋裕

その次の文章があるので執行猶予です(逆に,この文章が無ければ実刑です)刑の執行猶予は,本来,刑務所に入らないという意味ではありません。基本は・・この例では・・「刑務所で1年間,刑務作業をする。」ということです。ただし,直ぐに刑務所に入るのではなく,刑務所に入るのを,つまり刑の執行を3年間先に延ばしましょう,という意味です。

新人職員

猶予は「先に延ばす」という意味ですか?

弁護士
高橋裕

そのとおりです。広辞苑にも「実行の日時を延ばすこと」と記載されています。

新人職員

あ~,そう言えば,「借金の返済の猶予」という言い方もしますね。借金の返済日を先に延ばすということですね。

弁護士
高橋裕

そうです。「刑の執行猶予」は,「刑の執行(刑務所に入ること)を先延ばしする。」ということです。

新人職員

そうすると,執行猶予の判決をもらっても,刑務所行きがなくなった訳ではないのですね。

弁護士
高橋裕

そのとおりです。3年間の執行猶予期間(先延ばし期間)に,再び犯罪行為を行うなどすると,執行猶予(先延ばし)が取り消されて,結局,懲役1年の刑で刑務所に入ることになります。

新人職員

最終的に,懲役1年の刑で刑務所に入らなくてもよくなるのは,いつですか?

弁護士
高橋裕

執行猶予が取り消されることなく無事に3年間の執行猶予期間(先延ばし期間)が経過したときに,ようやく,懲役1年の刑で刑務所に入ることがなくなります。

新人職員

なるほど。今日の説明で,正しい知識が身に付きました。ところで,学生時代に,裁判所で法廷傍聴をした経験があります。そのとき丁度,執行猶予判決があって,裁判官が被告人に説明していましたが,よく分かりませんでした。

弁護士
高橋裕

法律の決まりで,被告人に説明することになっていますので,どの裁判官も皆説明していますが,被告人がどこまで正しく理解しているかは疑問が残ります。

新人職員

高橋先生は,裁判官時代は,どのように説明していたのですか?

弁護士
高橋裕

決まりですので法律的な説明をします。その後に「刑務所に入らないことが決まった訳ではありません。執行猶予が取り消しになれば,刑務所行きです。次に犯罪行為をすると刑務所に入ることを忘れないでください。」と説明します。

新人職員

執行猶予期間が過ぎると執行猶予の取り消しは無くなる,ということは言わないのですか?

弁護士
高橋裕

法律的な説明の中で言います。ただし,その点を余り強調すると,執行猶予期間が終わったら,再び犯罪行為を行なっても大丈夫などというとんでもない誤解をする被告人がいるので,その点は余り強くは言いません。

新人職員

そのような誤解をする被告人もいるのですか?

弁護士
高橋裕

います。裁判官時代に,執行猶予期間経過後に犯罪を行なった被告人の事件を何度も担当しましたが,執行猶予について尋ねると,執行猶予期間中だけは犯罪行為を行わないようにしていたという被告人が結構いました。執行猶予期間が経過した後はどうするつもりだったのですか?,と尋ねると,考えてはいなかったという答えが多かったように思います。

新人職員

最後に,一つ質問があります。

弁護士
高橋裕

はい,何でしょうか?

新人職員

罰金刑には執行猶予は付かないのですか?

弁護士
高橋裕

法律上は,罰金刑にも執行猶予を付けることはできます。しかし,実際には,罰金刑に執行猶予を付けることは殆どありません。懲役刑,禁錮刑という刑務所に入る刑に執行猶予を付けるのが実情です。

新人職員

あっ,もう一つ質問がありました。

弁護士
高橋裕

何でしょうか?

新人職員

実刑判決だったのに,その日のうちに記者会見している被告人がいますが,どういうことですか?

弁護士
高橋裕

今日の最初の疑問ですね。
実刑判決が予想される場合に,あらかじめ保釈請求の準備して,実刑判決後,直ちに保釈請求し,それが許可されると,実刑判決の日に記者会見することができます。

新人職員

わかりました。今日は,執行猶予について説明していただきました。ありがとうございました。

弁護士
高橋裕

執行猶予判決をもらうための弁護活動は、具体的な事件の内容によって異なってきます。
事案別の対応についての、各項目をご覧ください。

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