検事への申し入れ | 元裁判官による刑事弁護、名古屋の弁護士・高橋裕

名古屋の元裁判官による刑事弁護、成田龍一法律事務所 高橋裕弁護士
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検事への申し入れ

※弁護士事務所に勤務して間もない新人職員(少しの知識と経験あり)からの質問に答えるという形で説明しています。

新人職員

前回は,「逮捕されている人が本当に犯罪行為を行なっていない場合」の弁護活動についてお話をいただきました。

弁護士
高橋裕

はい。

新人職員

今日は,前回の最後に話していた「警察や検事への申し入れ」について,説明してください。

弁護士
高橋裕

分かりました。「警察や検事への申し入れ」は,実際に多いのは「検事への申し入れ」です。そして,「検事への申し入れ」は,これまでにお話してきた自白事件と否認事件の場合で,役割が異なります。

新人職員

どのように異なるのですか?

弁護士
高橋裕

それでは,自白事件の場合から説明します。自白事件での弁護活動のポイントは何でしたでしょうか?

新人職員

示談交渉ですか?

弁護士
高橋裕

そのとおりです。示談交渉をする際に,検事への申し入れが重要です。示談交渉を始めるときには,先ず,担当検事に電話で申し入れをします。「被疑者から示談金を既に預かっているので,被害者と示談したい。」と申し入れます。

新人職員

その理由が2つあるのですね。

弁護士
高橋裕

そうです。一つ目の理由は,通常の場合,被害者の連絡先が分からないからです。担当検事に申し入れをすると,担当検事が被害者に電話します。担当検事から電話を受けた被害者が。示談の話を聴いてもいい,弁護人に示談交渉のために電話番号を教えてもよい,と言ってくれた場合は,担当検事が被害者の電話番号を教えてくれます。ここから,示談交渉のスタートです。

新人職員

もう一つの理由は,被害者と裏取引をしていると誤解されないようにするためですね。

弁護士
高橋裕

そのとおりです。示談交渉を担当検事の知っている状況下で行うことによって,裏取引をして事件の揉み消しをしていると誤解されないようにするためです。

新人職員

否認事件の場合,検事への申し入れはどのような意味があるのですか?

弁護士
高橋裕

否認事件の場合,逮捕されている人の思いとは違う供述調書ができあがってしまうことがときどきあります。

新人職員

それを防ぐために,検事への申し入れをするのですね。

弁護士
高橋裕

そうです。検事が作成した供述調書に問題がある場合はもちろん,警察官が作成した供述調書に問題がある場合も,いずれの場合も担当検事宛に申し入れをします。

新人職員

警察官が作成した供述調書に問題がある場合も,担当検事に申し入れをするのはなぜですか?

弁護士
高橋裕

検事が捜査について警察官を指揮する立場にあるからです(刑訴法193条)。上司と部下ではないけれでも,それに似た関係です。

新人職員

検事が作成した供述調書に問題がある場合,その検事に申し入れをしても無意味ではないですか?

弁護士
高橋裕

申し入れをすることによって問題が改められることもあるので,全く無意味ではありません。

新人職員

少し意地の悪い質問かも知れませんが,担当検事に申し入れをしても問題が改められることが期待できない場合,どうするのですか?

弁護士
高橋裕

担当検事に申し入れをしても問題が改められることが期待できない場合,担当検事の上位者である刑事部長,交通部長などの上司(決裁官)宛てに申し入れをします。

新人職員

どうせなら,その検察庁のトップである検事正,あるいは,日本の検察の頂点である検事総長宛てに申し入れをしたらどうですか?

弁護士
高橋裕

そんな上の立場の人に申し入れをしても,書類を下に回されるだけで,それこそ意味がないと思います。

新人職員

なるほど。ところで,申し入れをして不当な供述調書を今後は作成させないようにすることは分かりましたが,既に作成されてしまった供述調書はどうするのですか?

弁護士
高橋裕

申し入れを,「抗議書」,「意見書」などといった書面送付という形で行うことによって,その供述調書が不当なものであることを示すことになります。弁護人の手元に控えを残しておいて起訴後の裁判の証拠として請求します。

新人職員

裁判官に対し,供述調書に書いてあることが100パーセント正しいというわけではないことを訴えるのですね。

弁護士
高橋裕

そうです。後日,裁判が始まってから主張するよりも,不当な供述調書が作成された直後に申し入れをしておくと,その調書作成経過について裁判官も留意してくれるようになります。

新人職員

また,意地の悪い質問で申し訳ありません。そもそも,不当な供述調書を作らせないことが大事,そこが勝負のしどころ,ということではなかったですか?

弁護士
高橋裕

そのとおりです。しかし,弁護人がどれだけ弁護活動を頑張っても,本当に残念ながら,不当な供述調書の作成が零になることは無いと思われます。裁判の現場を見たり,報道を見たりしているとつくづくそう思います。そうであれば,不当な供述調書が作成されてしまった場合の対処法を準備しておくことも大切です。

新人職員

わかりました。ところで,申し入れは,弁護士であれば誰がしても同じですか?

弁護士
高橋裕

誰が申し入れをするかではなく,どのような内容の申し入れをするかが重要です。「抗議書」,「意見書」などといった書面の内容は一律ではなく,事件毎,弁護士毎に異なります。

新人職員

申し入れを効果的な内容にするにはどうしたら良いのでしょうか?

弁護士
高橋裕

これも,今まで何度も説明してきた「知識と経験」です。
常に問題意識をもって多くの事件に当たっていれば,自ずから身に付いてきます。申し入れのポイント,申し入れの表現は,当然のことながら,事件によって異なります。いろいろな事件を経験し,常に問題意識をもって事件に当たることが大事です。

新人職員

最後の質問です。攻め(攻撃)の材料を発見した場合,警察や検事にそのことを伝えるのですか?

弁護士
高橋裕

それも,事件の内容によります。最も効果的になるように考えて,すぐに伝える場合もあれば,起訴後の審理まで内緒にしておくこともあります。

新人職員

わかりました。今日は,「警察や検事への申し入れ」についてお話をいただきました。ありがとうございました。

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