暴行事件-勾留されずに釈放-
暴行事件
※弁護士事務所に勤務して間もない新人職員(少しの知識と経験あり)からの質問に答えるという形で説明しています。
※依頼者等のプライバシーを守るため,事案の本質に関わらない点を若干修正しています。予め,ご了承ください。
新人職員
今日は,「解決事例」のうち,「暴行事件-勾留されずに釈放-」についてお話をお願いします。
弁護士
高橋裕
はい。今回ご紹介する事件は,前科のない普通のサラリーマンが,会社の歓迎会で飲み過ぎて酔っ払ってしまい,帰り道で見ず知らずの人とトラブルになり,暴力を振るったという事件です。
新人職員
相手の人は怪我はしなかったのですか?
弁護士
高橋裕
実際には,打撲等の怪我をしていましたが,被害者も病院に行くのが面倒ということで診断書がなく,暴行事件という扱いでした。
新人職員
逮捕されたのですか?
弁護士
高橋裕
110番通報を受けて,直ぐに警察官が現場にきました。そこで,おとなしくしていれば良かったのですが,酔って気が大きくなっていたため,なだめる警察官にくってかかるような対応をしたため,準現行犯として逮捕されてしまい
ました。
新人職員
高橋弁護士のところには,いつ連絡が来たのですか?
弁護士
高橋裕
翌日の朝一番に,逮捕された人(被疑者)の奥さんから,インターネット広告を見て,弁護士高橋まで電話がありました。
新人職員
まずは相談からですか?
弁護士
高橋裕
この件では,奥さんから,直ぐに刑事弁護活動を始めて欲しい,一日も早く釈放されるように弁護活動を直ぐにして欲しい,できれば会社に知られないようにして欲しい,との依頼がありましたので,直ぐに受任することにしました。
新人職員
奥さんとはどこで会ったのですか?
弁護士
高橋裕
被疑者が逮捕されて留置されている警察署のロビーです。そこで,委任契約をして,そのまま,被疑者との接見(面会)をしてきました。奥さんには,接見が終わるまで,そのロビーで待ってもらいました。
新人職員
接見の結果はどうでしたか?
弁護士
高橋裕
被疑者は一晩経過して酔いも覚めており,事実関係の詳細は覚えていないが,相手の人に暴力を振るったことは認めていました。
新人職員
そうすると,先ずは,示談ですね。
弁護士
高橋裕
そのとおりです。検察官送致前でしたので,担当警察官(捜査主任官)を介して被害者の連絡先を教えてもらい,示談交渉を始めました。もちろん,被疑者と奥さんの了解は得ています。
新人職員
直ぐに示談成立となりましたか?
弁護士
高橋裕
直ぐに示談成立とはなりませんでした。
新人職員
なぜですか?
弁護士
高橋裕
被害者も,このようなことになったのは初めてであり示談してよいものか迷っていた上,仮に示談するとしても,体が痛むので医者に診て貰ってからにしたいという意向でした。このような場合,示談を無理強いすると良い結果は得られません。
新人職員
どうすれば良いのですか?
弁護士
高橋裕
このまま何もしないと,逮捕の翌々日に検察官送致,勾留請求,勾留と進んでしまう危険性もあったので,警察官(捜査主任官)宛ての上申書を作成しました。被害者の意向を尊重しつつ誠実に示談交渉を続けているので早期釈放を願いたいという内容を詳しく記載した上申書です。
新人職員
その後,どうなりましたか?
弁護士
高橋裕
警察での釈放は残念ながらされず,逮捕の翌々日,検察官送致されました。担当検察官が決まりましたので,その後の示談交渉経緯を詳しく記載した上申書を作成して,検察官宛てに提出しました。その上で,検察官に連絡して,勾留請求をしないで被疑者を釈放し,在宅事件に切り替えて貰いたいと折衝しました。もちろん,奥さんの身柄引受書も上申書とともに提出済みです。
新人職員
結果はどうでしたか?
弁護士
高橋裕
示談は未成立でしたので,示談交渉状況を担当検察官から尋ねられました。交渉状況を詳しく説明し,今後も引き続き誠意を持って示談交渉を続けるので,近日中に示談成立の見込みが十分にあると強く主張しました。
新人職員
勾留請求はされなかったのですね。
弁護士
高橋裕
そうです。その日のうちに釈放されて,無事に帰宅することができました。
新人職員
釈放されても,在宅事件に切り替わっただけで,事件はまだ終わってないですね。
弁護士
高橋裕
そのとおりです。その後,誠意を持って示談交渉を続けた結果,1週間ほどして示談が成立し,担当検察官にその旨報告し,最終的には不起訴処分(起訴猶予)となりました。
新人職員
前科も付かない解決ですね。
弁護士
高橋裕
そうです。一番良い結果となりました。
新人職員
ところで,会社には知られずに済んだのですか?最初の奥さんの要望でしたね。
弁護士
高橋裕
曜日の関係もあって,幸い,知られずに済みました。歓迎会の帰り道で暴力を振るって逮捕されたのが木曜の夜,金曜の朝に弁護士高橋が依頼を受けて直ちに受任,金曜の午後に示談交渉,土曜の朝,検察官送致された後,弁護士高橋が検察官と釈放に向けての折衝,検察官の理解を得て,土曜の昼過ぎ,勾留請求されずに釈放となりました。
新人職員
金曜は会社を欠勤してますが,大丈夫でしたか?
弁護士
高橋裕
奥さんが,金曜の朝,会社に電話して,昨晩の歓迎会で飲み過ぎて体調が悪いので,金曜一日休ませてくださいと伝えました。飲み過ぎたのは事実で,一緒に飲んでいた会社の人達も分かっていたので,信用して貰えました。土曜の昼過ぎには帰宅できたので,月曜から通常どおり出勤し,金曜の体調不良欠勤をお詫びする形で済みました。
新人職員
良かったですね。ところで,高橋弁護士は,逮捕日の翌日朝一番からその次の日の昼過ぎまで,この事件にほぼ掛かり切りでしたね。
弁護士
高橋裕
そのとおりです。
新人職員
他の仕事に影響は出ないのですか?
弁護士
高橋裕
他の仕事は予定を変更して,この事件を最優先で行いました。刑事弁護は,何よりもスピードが大事と言われるように逮捕直後が一番大切です。
新人職員
予定を変更する場合,変更される事件の依頼者は不満を持たないですか?
弁護士
高橋裕
受任する際に,あらかじめ,このようなことがあり得るので,事前に了解を戴いています。その代わり,その依頼者に緊急事態が生じたときは,別の仕事予定を変更してでも緊急事態に対処する約束をしています。臨機応変に対応するということで信頼を得ています。
新人職員
よくわかりました。
今日は,「解決事例」のうち,「暴行事件-勾留されずに釈放-」についてお話をしていただきました。ありがとうございました。