家族が逮捕・勾留されたら相談⑤(釈放はいつ?(ウ)(勾留取消請求))
家族の逮捕⇨弁護士相談
※前回(➃)は,勾留決定に対する準抗告申立て(釈放のための弁護活動)についてお話しました。
※今回(➄)は,勾留取消請求(釈放のための弁護活動)についてお話します。
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【勾留取消請求,勾留取消決定】
・勾留の理由又は勾留の必要がなくなったときは,裁判所は,・・・弁護人・・・の請求により,・・・決定を以って勾留を取り消さなければならない(刑訴法87条1項の抜粋)。
・弁護人の請求が勾留取消請求,裁判所の決定が勾留取消決定です。
・なお,勾留取消請求は,法律上,弁護人だけでなく被疑者本人も行なうことができますが,実務では稀です。ほとんどの場合,弁護人による申立てです。
・勾留取消は,文字通り「勾留を取り消す」ものであり,「勾留の裁判を取り消すことを求める」準抗告申立てと共通する部分もあります。
・他方,異なる点もあります。ひとつづつ説明します。
【準抗告申立てと異なる点(取消のみ)】
・勾留の裁判に対する準抗告申立ては,勾留の裁判を取り消すことを求めるほか,勾留の裁判の内容(勾留場所)の変更を求めることもあります。
・他方,勾留取消請求は,文字通り,勾留を取り消すことを求める請求です。
【準抗告申立てと異なる点(判断の基準時点)】
・法律(刑事訴訟法)の解釈上,勾留の裁判に対する準抗告申立ては,勾留の裁判が行われた時点を基準として,その時点における判断の違法又は不当を理由とする申立てであるのに対し・・・・・勾留取消請求は,勾留の裁判が行われた後の事情変化(例えば,住居判明,示談成立,身柄引受人の登場など)を理由として,勾留取消請求の時点における勾留の理由又は必要がなくなったことを主張して,勾留の取り消しを求めるものです。
・ただし,実務では,裁判所が勾留の裁判に対する準抗告申立てに対する判断をする場合に,勾留の裁判後の事情変化(示談成立など)をも考慮することがあるという実情は,前回(➃)に説明したとおりです。
・勾留の裁判が行われた時点では,その判断が違法又は不当であるとは言い難いが,その後の事情変化(住居判明,示談成立,身柄引受人の登場など)によって,勾留の理由又は必要がなくなったことが明らかな場合には,勾留取消請求をした方が釈放されやすい事案もあります。
・当職(元裁判官弁護士高橋)も,裁判官時代に,数は少ないですが,勾留取消請求を認めて被疑者を釈放する判断をした事件がありました。その事件では,勾留の裁判そのものは正当であるが,勾留の裁判後に生じた新たな事情を考慮して勾留の必要なしという理由で勾留を取り消しました。
【準抗告申立てと異なる点(手続)】
・勾留の裁判に対する準抗告申立ては,勾留の裁判に対する不服申立てですので・・・勾留の裁判をした裁判官が地方裁判所・簡易裁判所いずれの裁判官であっても・・・地方裁判所の裁判官3名の合議体により判断されます。
・他方,勾留取消請求は,裁判所に対する新たな申立てです。
・勾留取消請求が認容されて勾留取消決定が出されても,まだ安心はできません。
・勾留取消決定に対する準抗告申立て(勾留取消決定の取り消しを求める)を検察官が行なうことが可能であり,数は少ないですが,実際にもあります。
・当職(元裁判官弁護士高橋)も,先に挙げた勾留取消決定の一つについて,検察官から準抗告申立て(勾留取消決定の取り消しを求める)がありました。その事案では,地方裁判所の裁判官3名の合議体の判断により準抗告申立てが棄却され,勾留取消決定が維持されて被疑者は釈放されました。
【準抗告申立てとの使い分け】
・これまでの説明からご理解いただけると思います。
・勾留の裁判が行われた時点を基準として,その時点における判断の違法又は不当を理由として,勾留の裁判の取り消しを求める場合は,勾留の裁判に対する準抗告申立てを行ないます。
・その申立ての中で勾留の裁判後に生じた新たな事情(示談成立など)を主張することは,理論上の問題は残りますが,実務では,一般に許容されています。
・他方,勾留の裁判が行われた時点では,その判断が違法又は不当であるとは言い難いが,その後の事情変化(住居判明,示談成立,身柄引受人の登場など)によって,勾留の理由又は必要がなくなったことが明らかな場合には,勾留取消請求をした方が釈放されやすいと考えられます。
・ただし,勾留取消決定を得ても,それだけでは安心できず,検察官からの勾留取消決定に対する準抗告申立ての可能性が残されていること,その結果,一旦は得た勾留取消決定が取り消されてしまう可能性もあることは既に説明したとおりです。
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※今回(➄)は,勾留決定後に釈放される機会(タイミング),釈放のための弁護活動のうち,勾留取消請求,勾留取消決定による釈放について,お話しました。
※勾留取消請求,勾留取消決定は,勾留の裁判に対する準抗告申立てに比べて実例が少ないため,一般的な説明が中心となりました。
※次回(➅)は,勾留決定後に釈放される機会(タイミング),釈放のための弁護活動のうち,勾留期間延長の阻止(前半)について,お話する予定です。
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【相談電話でご説明する事項=質問される事項】
・逮捕後の手続きの大まかな流れ(今後どうなるの?)・・・前々々回(➁)
逮捕~勾留(釈放)~起訴(不起訴)~保釈まで
(起訴後の審理(公判手続)~判決~控訴は,別途お話します)
・釈放される時期(いつ釈放されるの?)・・・前々回~今回~次回(➂~➅)
勾留請求前~勾留請求後~勾留決定後~勾留期間延長決定~勾留期間満期~起訴後(保釈)
・未成年者の場合,成人との違いはあるの?
未成年者にも保釈はあるの?
・弁護士の関与
弁護士を付けた方がいいの?
弁護士はどの段階で関与するの?
・弁護人などの種類,費用
国選弁護人
私選弁護人
当番弁護士って聞いたことあるけれど,何?
日弁連被疑者援助弁護士って聞いたあるけれど何?
★20年にわたり刑事事件担当裁判官を勤めた弁護士高橋裕が,名古屋の実情を含め,お話します。
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