

※弁護士事務所に勤務して間もない新人職員(少しの知識と経験あり)からの質問に答えるという形で説明しています。
新人職員
保釈金が支払えないと,警察署から出て来られないですね。
弁護士
高橋裕
そのとおりです。折角,裁判官(裁判所)が保釈を許可してくれても,保釈金が用意できないために釈放されないケース,保釈金の用意に時間がかかり釈放までに相当日数遅れるケースも,現実にあります。なお,正確には「保釈保証金」と言いますが,わかりやすいので,「保釈金」と呼んで説明することにしましょう。
新人職員
保釈金は,いくらくらいですか?
弁護士
高橋裕
事案の内容と被告人の資力によります。最近では,150万円~300万円くらいになることが多く,300万円を超えると,次第に事例が少なくなり,億単位の保釈金は稀です
新人職員
億単位は論外ですが,150万円~300万円でも,用意できない人は結構いるのでしょう。
弁護士
高橋裕
そのとおりです。それが現実です。そのような場合に,保釈金を立て替えてくれる団体があります。
新人職員
聞いたことがあります。確か「日本保釈支援協会」ですね。
弁護士
高橋裕
そのとおりです。
新人職員
誰でも,保釈金を貸してくれるのですか?
弁護士
高橋裕
いいえ。「誰でも」という訳ではありません。それに,「貸す」のでなく,「立て替え支援する」のです。
新人職員
「貸す」のと「立て替え支援する」のは,どう違うのですか?
弁護士
高橋裕
支援を受ける側からすると,どちらでもいいと思うのですが,いろいろな法的規制の関係で,「立て替え支援」となっています。両方の違いに興味があったら,詳しいことは日本保釈支援協会のホームページを見てください。
新人職員
そこは余り興味ないからいいです。
それよりも,「誰でも」という訳ではないという点が,とても気になります。
弁護士
高橋裕
そうですね。立替支援を受けられるか否かは,釈放されるか否かの大問題に直結しますからね。
新人職員
どういう場合に,立替支援が受けられないのですか?
弁護士
高橋裕
一般に,薬物犯罪は厳しいと言われているようです。弁護士高橋が日本保釈支援協会への申し込んだ人の代理人を何度も務めた経験では,薬物に限らず,犯罪を繰り返している人には立替支援をしないという基本的方針があると考えられます。
新人職員
実際に,支援を断られることもあるのですか?
弁護士
高橋裕
何度か断れたことがありました。そのような事例は,ほとんど,犯罪を繰り返している人の事件でした。
新人職員
日本保釈支援協会のような団体は,他にはないのですか?
弁護士
高橋裕
以前は幾つかあったようですが。それらの団体のホームページも以前はインターネット検索すると見つかりました。しかし,今は,活動休止か団体自体が消滅したか,どちらかの事情でホームページが見当たらなくなりました。
新人職員
日本保釈支援協会を利用する上で,注意することはありますか?
弁護士
高橋裕
注意事項としては,
1 今説明したとおり,立替支援が受けられない場合もある。
2 本人以外の人(通例は親族)が日本保釈支援協会に申し込む手続が必要である。
3 親族が現金を用意する場合に比べ,支援申込み➡事実関係の調査➡審査➡支援決定➡支援実行➡口座振り込み,というように幾つかの手順があり,現金を手にするまでに時間がかかる。
4 保釈金の全額を支援するのでなく,多くの場合,申込人が一部(経験した金額10万円~30万円)自己負担する必要がある。
5 支援の手数料が割高である。銀行の金利と比較すると高額である。
6 万一,保釈金が没取されると,申込人(親族)が日本保釈支援協会に立替金を返却できない状態となり経済的窮地に陥る。
以上のような事項が挙げられます。
新人職員
実際に,日本保釈支援協会を利用しようと思ったら,どうすればいいですか?
弁護士
高橋裕
日本保釈支援協会に(03-3663-6655)するのが一番です。
「初めての利用なので,申し込みの仕方を教えてください。」と言えば,詳しく教えてくれます。被疑者の事件の内容などを聞かれたら,「担当弁護士に聞いてください。担当弁護士は,名古屋の弁護士高橋裕です。」(当職が担当弁護士の場合)と答えてください。
新人職員
教えてくれますか?
弁護士
高橋裕
大丈夫です。日本保釈支援協会の職員は,皆,手続に慣れています。親切に教えて貰えます。
新人職員
申し込みの最初から,弁護士が手続をしてもらうことはできないのですか?
弁護士
高橋裕
そのようにしている弁護士も多いと思われます。しかし,大金を立替支援してもらう重要な手続ですので,弁護士高橋は,申し込みだけは,申込人(親族)自身にお願いしています。その後の手続は弁護士高橋が代理人として行なっています。
新人職員
わかりました。申し込む必要のある場合が来たら,依頼者にそのように伝えます。
他に,親族が現金を用意する場合と,日本保釈支援協会から立替支援を受ける場合の違いはありますか?
弁護士
高橋裕
親族が現金を用意している場合と比較すると,保釈許可決定後の口座入金までに数時間~半日程度かかることもあり,その時間だけ釈放が遅くなります。
新人職員
できれば,親族が現金を用意した方がよいということですね。
弁護士
高橋裕
はい。
新人職員
仮に,保釈金が300万円と決まった場合,親族が200万円用意できるが,100万円足りない場合は,どうなりますか?
弁護士
高橋裕
その場合は,足りない100万円について立替支援を申し込みます。立替支援を受ける金額が少なくなれば手数料も少なくなります。可能限り,親族が現金を用意した方が良いですね。
新人職員
最後にもう1点。日本保釈支援協会への申し込みは,保釈が許可された後にするのですか?
弁護士
高橋裕
いいえ。そんなことはありません。保釈請求と同時に行うことも可能です。
新人職員
起訴前からすることもあるのですか?
弁護士
高橋裕
起訴前の刑事弁護から担当している場合は,起訴不起訴の見通しにかかわらず,如何なる事態になっても速やかに対応できるように,起訴前に日本保釈支援協会への申し込みを済ませておく場合がほとんどです。
結果的に不起訴となって立替支援を受けないことになっても,問題ありません。日本保釈支援協会へは,弁護士高橋からその旨連絡します。
新人職員
なるほど。今日は,保釈金が用意できない場合のお話を聞かせていただきました。ありがとうございました。